2015/02/01

お役所は「前例」に弱い?!

軽症者の私には、いまひとつ理解できていない、
訪問介護について何か知見が得られるかもしれないと思い、
週末、下記のセミナーに参加させていただいた。

「ALS患者等の医療的ケアシンポジウム」
2015年1月31日(土) @ベルサール新宿グランド

色々と考えさせられる一日だった。

前半のパネラーは、弁護士の長岡健太郎氏。
「医療的ケア・長時間介護の獲得に向けて」

障害者の公的介護に関わる裁判を積極的にサポートされている、
和歌山の弁護士さんだ。
学生時代に介護ヘルパーのボランティアをしていたことが、
障害者の人権を守る活動を始められたきっかけだという。

「重度訪問介護」の支給数。
先人たちによると、この支給数をいかに獲得するかが、
障害者が人間らしい生活を送れるかどうかの鍵となるらしい。

「障害者基本法」で謳われている障害者の尊厳ある生活。
この理念を支えるサービスへの予算は、
国庫がすべて負担するわけではなく、自治体の持ち出しがあるため、
実情としては、支給は予算に応じ大幅に制限されている。
裁判で支給増を獲得した患者さんの公判例などが紹介された。

長岡先生によると、役所を説得するのに必要な武器は、下記の2つ。

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1)ケアの足りていない現況、そして求める生活に本来必要なケアやリソースを、
 具体的に説明する資料。
(日々のスケジュールや介護写真など、不便な生活を想起できる内容が良い。)

2)患者の居住自治体、無ければ他自治体での「前例」
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つまり、論理的に「情」に訴え、「前例」で落とすってことですね。(笑)

なんだか納得。裁判ドラマでも良く「過去の判例」が出てきますもんね。
もしかしたら、お役所の人が上司を説得しやすい資料を作ってあげる
ということを目指すといいかもしれない。


それにしても、支給数が自治体によって大きく違うのには驚く。

セミナーの後で、支給実態をネットで調べてみると、
最も重度とされる区分6への支給でも、300時間に満たない自治体が多い。

300時間、この時間が意味するところが、
まだヘルパー事業所等を利用していない私には分かっていなかった。

長岡先生が担当した裁判の原告の方のコメントによると、
377時間でも「通院はおろか、外出もままならなかった」とある。

う~む。1日12時間でも全く足りないんですね。

ただし、先駆者の患者さんたちの努力の結果、
ALSは特例としている自治体も多い。

例えば私が転居を予定している札幌市の場合、
以前、札幌ALS協会の方に教えていただいた情報によると、
人口呼吸器をつけていない1人暮らしのALS患者は、400~500時間の支給だという。
つけていれば、例外的に720時間が認められているらしい。
(私の場合、家族同居になるので400時間がやっとか?)

事例紹介のパネリストだったFさん(支障があるといけないのでイニシャルで)
の支給時間は860時間だそうである。
ちなみにFさんは、発話と経口での食事は可能、
バイパップと車椅子、マイトビーを使用されている。
24時間介護を獲得されているALSの患者さんとしては、重い方ではない。
おそらく会場にいるほとんどの方がうらやましいと思ったに違いない。

ちなみに、Fさんはフェイスブックで「前例」を集めて交渉に備えたそう。

患者さん個々の努力は大切だと思うけれど、
前例については、協会などでアンケートをとり、
データベース化してくれるとありがたい。(もちろん個人情報は省いて)
アイスバケツチャレンジの寄付はこういうことに使えば良いのにと思った。


色々調べてみると、どの自治体でも、
ALS患者は、かなり例外的な特別待遇を受けていることに気づく。

これは、ひとつは先人の患者さんたちの努力によるもの。
役所との粘り強い交渉、裁判には頭が下がる。

そしてもうひとつは、ALS患者が「希少」だということ。

ALSは過酷な病気ではあるが、
まったく同じ病態でも脳梗塞やパーキンソン病だったら、
おそらく24時間介護の獲得は困難だ。
罹患率が高い病気には、「前例」は作られないだろう。

ALS患者は恵まれていると言われるのは、確かに真実らしい。
なんだか目からウロコ。。。


ちょっと長くなったので、続きは次回で。

5 件のコメント:

  1. いらしてたんですね。ご挨拶したかったです。

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    1. はじめまして!
      先日は、参考になるお話をありがとうございました。
      その後、手術は大丈夫でしたか?
      藤元さんと海老原さんは、車椅子ではあるけれど、
      とても自信にあふれていて、そのお姿が印象的でした。

      セミナーでは、患者本人のコミュニケーション能力の大切さを痛感したので、
      失われつつある話力の代わりをなんとかせねば!と最近少し焦っています。準備できるようで、意外とできないのがもどかしい・・・。

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    2. マイボイスでしたら、お手伝いできるかもしれません。ご遠慮なく。

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    3. ありがとうございます。
      自分の声は、時すでに遅しかもしれませぬ。。。
      ところで以前、荻上チキさんのラジオに出演されてませんでしたか?
      藤元さんの声、いい声ですね♪

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    4. https://www.youtube.com/watch?v=QaeS4ZxWMSo

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